夢想奇譚
3,“白霧びゃくむ



これは眠った時に見た夢の話。

この世に居る筈のない人が居た。
もう会える筈のない人が居た。
その人は私に向かって優しく微笑んでいる。
周りに居る人もその人が居ることに
何の不思議も感じていない。
ただ、私だけが違和感を抱き慄れていた。
「どうして死んだ筈なのに此処に居るの!?」
私は恐怖の入り混じった声でたまらずその人に向かって叫んだ。
すると、その人は先刻までの微笑が嘘のように消え、
般若のように恐ろしい顔に変わった。
私の心と体はみるみるうちに凍りついた。
気付いては不可ないことに気付いてしまったのだから。




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